働いたら負け、2月10日は「ニートの日」
2月10日はニートの日らしい。僕は、働かないということに関して、必ず思い出すエピソードがある。
僕の大学の同期に、漫画家を目指して上京したものの、パッとせずに29歳になってしまった男がいた。
特に働くわけでもなく、親から仕送りをもらいつつ、たまにはバイトもしつつだが、基本的にはひたすら漫画ばかり描いていた。そこまですれば何か芽が出るはずなのだが、残念ながら無理だった。
周りを見渡せば、同期の連中は普通に働き、それなりのポジションになってたり、結婚して妻子を養ってたり、そんな周囲の状況とのギャップが彼を苦しめ、さすがに30歳だし諦めようかという考えに支配されていた。
彼にとっての30歳が何を意味するのかよく分からないが、キチガイとかクソ人間とか社会不適応者に徹していられなくなったら、もはや芸術家としてはお終いだ。僕は30歳になるまでに漫画家デビューできなかったら、潔く自決するように勧めていた。
しかし彼は自決しなかった。
自ら命を断つということは決して褒められた行為ではないが、そのくらいの姿勢で取り組んで欲しいということだ。任務遂行に失敗したら死ぬ。筆を断つ。拳を断つ。これは当たり前のことだ。
ものすごくカッコワルイと感じた。それ以降、彼とは一切の関係を切った。
「働いたら負けかなと思ってる」
「今の自分は勝ってると思います」
最初からそんな風に言ってくれれば、僕はそれを受容したと思う。親の仕送りで生きている三十路独身男とも友達でいられたと思う。武士は食わねど高楊枝でいざ鎌倉で腹切りだ。
投稿者 愛場大介(Daisuke AIBA / Jetdaisuke) : 2005年2月 9日 16:30