かわいい子には「うごメモはてな」をさせろ
今日現在、無料ダウンロードできる「ニンテンドーDSiウェア(DSi Ware)」は3つしかありません。
ひとつは「DSiブラウザー」
これは所謂ウェブブラウザですから無償提供されてしかるべきものでしょう。あまり使い勝手がいいとは言えませんが、まだ自分のPCを持たないちびっ子などには重宝するようです。
つぎに「どこでもWiiの間」
ごく最近になって提供され始めたソフトで、文字通りWiiのサービスと連携するもの。MacとiPodのような関係をWiiとDSiで構築していくためには、これも戦略的に無償提供されて当然といえます。
そして本題「うごくメモ帳」
白黒写真や音声をまじえた高度なパラパラ漫画を作成でき、ウェブで共有できる(うごメモはてな/うごメモシアター)というもの。機能だけを見れば1,000円以上とってもおかしくないと思うのですが無料でダウンロードできてしまいます。これがなぜ無償で提供されるのかというあたりに、任天堂が思い描くニンテンドーDSiの将来像のヒントがあると思います。
それはさておき先日、その「うごくメモ帳」のバージョン2が公開されました。僕も息子に急かされながらアップグレードしたので(それも無料)、ここでちょっと新機能をおさらいします。
まずはレイヤー機能。
各フレーム上下2層のみですが、背景と人物を分けて描けるだけでも格段にありがたい。上下の重ね順を入れ替えることも出来ます。フォトショップ(Adobe Photoshop)のように目玉ボタンで表示/非表示を切り替え可能。
そしてコピー&ペースト
これもフォトショップライクになげなわツールで範囲選択してその部分をコピペできます。また、レイヤーの縮小と横反転もできます。(拡大・縦反転も可→後述)
主立った新機能は上記ふたつ。
ほかにはニンテンドーDSiサウンドから音声をインポートできたり、ブラシの種類が増えたり、隠し機能的に提供される多彩なキーコンビネーションがあります。たとえばLボタンを押すとコピペではなくカット&ペーストに、縮小は拡大に、横反転は縦反転に。またselectボタンを押しながら2点を指定すると直線が引けます。Xボタン長押しで全フレーム消去も可能などなど。
そういえばフォトショップを始めた頃、まずはキーボードショートカットを覚えるよう言われたのを思い出します。また、うごくメモ帳そのものもバージョン2でかなりクラシックなフォトショップに近付いたと思います。白黒とはいえフォトレタッチも可能ですしね。その昔DTPといえばマッキントッシュ(Macintosh)だったわけですが、当時フォトショップがキラーアプリだったように、ニンテンドーDSiにはうごくメモ帳があると。やっぱりお絵描きは遊びの基本ですから。
そしてマッキントッシュといえばDTMでもあったわけですが、これもDSでは既に「KORG DS-10」という優れたソリューションがあるわけです。また、うごくメモ帳という名の通りアニメーション制作ソフトというDTV要素も大きく含んでいます。
また簡易ゲーム的なうごメモ作品は、どことなくハイパーカードを思わせますね。▼参照→うごメモで簡易ゲームをつくるという発想
そう考えると、かつての一体型マッキントッシュを現代版にアップデートした姿がニンテンドーDSiなのではないかとすら思えてきます。マウスでGUIを操作するコンピュータと、タッチペンにより十字キーから解放されたゲーム機という革命的な点も似ています。
さて、うごくメモ帳では「うごメモはてな」という優れたパブリッシュ先を用意しているという点も忘れてはいけませんね。実はこれこそが重要。
作品なんてのは発表の場があってこそ、観客からのレスポンスを得られてこそのものです。初音ミクがニコニコ動画という場を得て活きたように、そういった場も含めて提供するということは大切なことです。
うごメモはてな/うごメモシアターが特に素晴らしいのは、テキストコメントや☆によるコミュニケーションだけではなく、マッシュアップという手法すらも機能として内包してしまった点。
ニンテンドーDSiに他のユーザーの作品を取り込み、それを改変して発表=マッシュアップすることができますが、その際にネタ元となった作品も併記されます。うごメモはてなの「派生作品」の欄がそれです。親作品、子作品、そして原作者がハイパーリンクされています。
また、作品を二次利用されたくない場合には、ファイルをロックして作品公開できます。
つまり子供たちが遊びのなかでごく自然に、ライツマネジメントやマッシュアップという今日のウェブサービス利用に欠かせない視点を獲得することができるのです。
「思想」や「概念」の域を出ないクリエイティブコモンズライセンスと違い、簡易的ではあれ「機能」として実装したという点で、うごメモはてなの凄さは分かっていただけるかと思います。
僕自身はわりとウェブ上での著作権管理や二次創作に関して足を突っ込んでるほうだと思いますが、それでも子供にそういったことを教えるのはかなりの労力を要すると考えていました。それが、うごメモはてなのおかげで一変したのです。こうした教育に必要なのはネットブックでもケータイでもなくニンテンドーDSiだったのです。
転ぶと痛いということを学ぶには自転車で十分です。いきなりF1マシンに乗せるような親はいません。だからまず「かわいい子にはうごメモはてなをさせろ」と思うのです。
投稿者 愛場大介(Daisuke AIBA / Jetdaisuke) : 2009年5月 5日 19:11