美味しんぼ 102集で自分と父の関係を思い涙した夜
美味しんぼ 102 (ビッグコミックス)
この美味しんぼ第102集が発売された日は、夜遅くまで酒を飲んでてタクシー帰りだった。
帰宅してから、海原雄山と山岡士郎が和解するまでを全て読み終えたのは深夜2時をまわっていただろうか。ひどく酔っていたので、読了してからすぐに倒れこむように横になった。そのまま朝まで深い眠りにつくだろうと思っていたのだが、そうはいかなかった。
涙が止まらない。泣いているわけではないが涙が湧き出てきて止まらない。和解のエピソードに感動したのでもなく、長い長い物語の収束を想い涙したのでもない。
ただひたすら僕は自分自身のこれまでのことを思い出して涙を流していた。
中二の夏休みのこと、父親が単身赴任することになった。そのときから僕は父と暮らしていない。
高校を卒業してから、ようやく単身赴任から戻ったのだが、入れ違いで僕が進学のため実家を離れた。だから父と同じ屋根の下で暮らしたのは14歳まで。いま34歳だから、父と暮らした期間よりも、父がいない期間のほうが長くなってしまった。
父との関係がまずかったことはない。山岡の反抗のような激しいものは何もない。でも中二男子にとって、今まさに"これから"乗り越えるべき一番身近な障壁が、突如として目の前からいなくなったというのは、その後の成長に及ぼす影響が少なくないはずだ。たった一段目ではしごを外されたようなものである。
他に家族は、祖母と母と妹二人。
ある日を境に男が僕一人だけとなった家のなかで、それなりに気を張って生きていたと思う。それは少々しんどいことだったかもしれない。
なんというか、バッターボックスで、敬遠されるのを分かっていながらも、ストレートを放ってきたときの準備を常に。たぶん心のなかでは毎回バットを振っている。それが今までずっと続いてしまっているのかもしれない。ちゃんとした勝負なんて一度もしてないから、中二の頃のもやもやとした父子関係のまま来てるのだ。
挑戦することなく負けもせず勝ちもせず教えを請うこともなく。
そういえば、十中八九みなが評価してくれるようなことがあっても、父から褒められたことがない。あまりの褒められなさすぎに、そのうちどうでもよいと考えるようになった。他での好評価を得て自信がつけばつくほどさらに。
そもそもそれは僕が、父子関係での土俵に立ててないから、その土俵が何なのかを探しもしなかったからではないかと思う。父が求めているのは、総理大臣になれということかもしれないし、ただ単に腕相撲で勝てばよいだけかもしれない。とにかくそれが何かを僕は知らない。そこは中二の夏に置き去りにしてきたのだ。
父のいなくなった食卓。テレビで美味しんぼのアニメを観ながら、銀髪でオールバックの父の姿を、海原雄山に投影していたのかもしれない。第102集を読んで今さらながらそう感じた。
とりあえず、次に父に会ったときは20年ぶりに「お父さん」と呼んでみようと思う。あの夏に立ち戻って、そこから始めなければいけないのだ、きっと。
投稿者 愛場大介(Daisuke AIBA / Jetdaisuke) : 2008年7月 3日 02:37