進撃の巨人 10巻まで読了
以下、ややネタバレを含みます。
「進撃の巨人」アニメのほうがとても好評のようでしたので、ためしにニコ動でちょっと見てみたら、とても面白くて仕方なかったので、原作の単行本をオトナ買いしてきました。
人間が地上の覇者ではなく、巨人たちに捕食される存在であるというファンタジー作品。その捕食されっぷりが有無を言わさずのもので、イデオンよりあっさり人が死ぬ。死ぬというより喰われる。これほどまで絶望感を味わう状況って現実社会ではなかなかございません。
とはいえ、壁をつくって巨人の侵入を防いでいる点、それでも侵入されてしまえば圧倒的に人が無力な点、これらは東日本大震災にも通ずるものがあるように感じました。当時の余震がひっきりなしに続いていた緊張感などが、この作品の世界観に一番近い状況でしょうかね。
かわぐちかいじ「ジパング」の初期なんかだと戦うの戦わないのと自問自答してるうちにヤラレてしまうというイライラ感がありますけども「進撃の巨人」では戦わなきゃ死にますし、戦ったとしても死ぬときは死にます。不運だったり力及ばずで死にます。なんたって主人公と思しき重要人物でさえいっぺん喰われてしまうわけです。これですよこれ、現実ってそういうものですもん。
#「ジパング」では世に問うためにあのイライラを設定してるわけですが、実際に自衛隊が攻撃をうけた際には、少なくとも現場レベルの隊員さんはやるのやらないのと自問せずに反撃するんでしょうね。そうあってほしい。
あとは、収入が増えないのに仕事だけ増えるとかいう時代の絶望感も似てますかね。
とにかく相手から矢継ぎ早に繰り出される攻撃やら難題やらを、ちぎっては投げちぎっては投げと対処するのが「現実」ってもんです。そしてやっぱり対処しきれずに現実に押し流されたり飲み込まれたりと、本作はまったく期待を裏切らないですね。
じゃあそうやって何の希望も見出せないまま縮小していく物語かというと全然そんなことはなくて、中二病さながらの神展開でいきなり現れたエヴァ初号機から碇シンジがサルベージされるようなアレだったり、実はあの子もあいつもという…
ストーリーと設定に関しては「よくできてるな」と感心することしきり。ただ、アニメの作画レベルとは裏腹に、コミックのほうは絵がひどいです。プロの漫画家に対してひどいと言ってしまうのも何ですけど、キャラの描き分けさえもちゃんとできてないように見受けられますので、意外性のあるストーリーと相まって脳内に混沌を引き起こします。
いや描き分け以前かな。骨格だとか動きの表現だとか、おかしなところは多々あります。黒い球体が空中に静止しているように見えるコマがあったのですけども、どうやらそれは「砲撃している場面の砲弾を描いてるようだ」と推測しなくてはいけないレベルだったり(笑)
かと思えば別人が描いたかのような激ウマのページもあったりして、その辺のブレがストーリー以上の謎だったりします。
幸いにもアニメの作画や動きが素晴らしいので、原作のどこまでを追うのか分かりませんけども、絵にまつわる不満はアニメのほうで解消できるとは思います。ストーリーをいち早く知っておきたい方は、原作マンガのほうでどうぞ。以下リンク先、紙だけでなくキンドル版もあります。
投稿者 愛場大介(Daisuke AIBA / Jetdaisuke) : 2013年6月 3日 04:02