高校生なら自衛隊(航空学生)を受験しておくと良い経験になるかもよ
自衛官の勧誘に関して興味深い記事がありました。
高校3年生の子どもに自衛隊から「赤紙」届きました(※「赤紙」=「赤紙なき徴兵制」「経済的徴兵制」)(井上伸) — 個人 — Yahoo!ニュース
昨日、私の子ども(高校3年生)宛てに、「防衛省・自衛隊からのお知らせ」という封書が郵送で届きました。
さっそく脊髄反射的に激昂されてる親御さんのツイートなどもありますが、こういった勧誘は今に始まったことではなく、私が高校生だった20年以上前にもありました。DMが届くだけではありません。地域事務所のスカウト担当自衛官の方が、運動部などをチェックしていました。
さて私が中学生のころトム・クルーズ主演の「トップガン」という映画が大ヒットしまして、以降何年かはテレビでも放映され、劇中で着ていたか着ていなかったかも不明なフライトジャケットのようなファッションアイテムがナウなヤングたちの間で大ウケでした。私もハマった口です。
その映画に加え、超時空要塞マクロス、エリア88、イーグルドライバーといったアニメや漫画によって、私の戦闘機熱はマックスまで高まりまして、航空自衛隊で戦闘機パイロットになるにはどういった方法があるのかと調べました。
あるんですね、ちゃんと。
一般隊員や曹候補生の募集とは別口であるんです。
それが「航空学生」というものです。
航空学生トップページ|防府北基地| [JASDF] 航空自衛隊
すぐさま資料を取り寄せまして、どういった試験内容なのか見てみたところ、これがなかなか面白い試験なんですね。私、周囲の「なぜ?」をよそに受験しました。だって好奇心旺盛な若者であれば受けずにはいられない内容なのです。
航空学生:各種募集種目:自衛官募集ページ:防衛省・自衛隊
まず応募資格が「高卒(見込含)21歳未満」となっています。つまり若者にしか資格がありません。4年かけて幹部かつパイロットに育てるわけですから当たり前ですけどね。これを逃すと防大卒にしかチャンスはありません。18歳から21歳だけに与えられた機会なのです。
なんの機会かといえば、タダで楽しいことがある機会です。件の募集ページによれば航空学生の試験は3次選考まであります。私のときもそうでした。
1次:筆記試験、適性検査
2次:航空身体検査、口述試験、適性検査
3次:航空身体検査(海上)、操縦適性検査及び医学適性検査(航空)
まず1次選考ではいわゆる5教科のテストに加え、小冊子に書かれた飛行機の計器類(そのとき初めて見るもの)を読み取るような適正試験がありました。これは住んでいる都道府県の会場にて受験できます。このとき私の受験した富山会場では、パスできたのはわずかだったようです。自衛隊の入隊試験でいうと防衛医大、防衛大に次ぐ難易度なので、そこそこの大学に合格するくらいの学力は最低限ないと厳しいようですね。ちなみに会場へはスカウトマン自衛官の方のクルマ送迎あり。
そして2次選考は体力テスト、これは都道府県よりもっと広域の地方でまとめて最寄りの空自基地で行われるようです。私は石川県の小松基地にて受験、これも自衛官の方によるクルマ送迎あり。
運動部在籍ならどうということはない試験ですけども、ちょいと厄介なのは視力検査。裸眼視力1.5が必要となります。まあ若ければそのくらいは平気だと思うかもしれませんが航空学生のは難易度が違います。おなじみの「C」マークがどの方向に開いてるかというのは同じ、ただしそれが時計盤の真ん中に表示されます。つまり上下左右の四方向ではなく、何時方向かという12段階!通常の3倍の難易度!
他にも息を止めて1分半とか、視界の広さを試されるという、戦闘機乗りならではの項目もありまして、知力体力ともに問われるという過酷な門。ただし自衛官の皆さん優しい方ばかりですし、受験生も飛行機が好きな野郎ばかりでさわやか。そしてこの2次選考での収穫はなんといっても、空自基地で初めて食べる昼食!ヤフオクで買う賞味期限切れのレーションではなく、通常の基地内の食堂でとる昼食です!
その後はエプロン、ハンガーでのF−15、F−4戦闘機を間近で見たり、許可されれば写真も撮ったり、さらには飛ばないけどもコクピットに座らせてもらったり!航空祭だってなかなかF−15のコクピットにゃあ座らせてくれないですよ。それを18歳の高校生(ミリヲタ・モデラー)にやらせてくれるという、ここで落選しても悔いのない感動のプログラム。お父さん、お母さんの納税に感謝。
そして知力・体力ともに兼ね備えた者だけが3次選考へと進むわけですが、これは山口県の防府にある基地に体験入隊して行われます。たしか4泊5日の期間だったと記憶してます。試験期間中は自衛官と同じ生活をします。
まずは石川県小松基地よりYS−11(当時)にて防府基地までフライト。もちろん無料。蛇足ですが私人生初の飛行機搭乗。
防府に着きましたら、6人ごとに部屋が割り振られまして、そこでフライトスーツ(つなぎ)とフライトジャケット、フライトブーツに着替えます。もうこの時点でかなり上がります(笑)。同部屋メンバー全員トップガンのサントラCDは持ってるという猛者たちでした(笑)。
3次試験は偉い人との面接と、最大のご褒美であるT−3練習機(当時)での操縦適正試験。つまり飛びます!およそ1時間×4回のフライトです。まだ自動車の免許も持ってないのに、しかも飛行機乗るのすら二回目だというのにいきなり操縦です(笑)。皆さん自衛隊機の操縦なんて経験ありますか?私4回も飛んでるんですよ。いいでしょ。最終フライトでは同乗教官によるアクロバット飛行も!どんだけサービスしてくれるんですか。
というわけで、他ではできない、しかも若いときしかできない経験を自腹ではなく、ほぼ税金のみでできてしまうんです。アクロバット飛行のときかかったGは忘れません。昨日の飲み会でも話しの流れでこの話題になりました。20年経ってもネタになるプライスレス体験、航空学生受験オススメです。ミリヲタならより刺さる部分多し。
まあそうでなくとも、自衛隊の基地内ではどういった食事が提供されているのか?暮らしぶりはどうなのか?日課や活動はどうなのか?衣類などの支給品はどういうものなのか?そもそも隊員たちはどういった人間なのか?健全なのか?それを目の当たりにできるというだけでも良い経験になります。そして、ほんのわずかな期間の限られた体験ではありますが、それでも、そういった世界を垣間見てきた者として語れること・伝えられることはあります。
冒頭に紹介した記事中には
とりわけ、「隊舎で生活する隊員は全て無料です!」として、「家賃、食費、光熱費、水道料金」など「生活費」(全国平均月約9万6千円)が全て無料とのこと
という一文がありましたけども、我々が払った税金がそこに投入されているわけですから、やはり若いうちに見知っておくことは悪いことではないと思います。そういう意味でも、航空学生を受験して良かったと思います。少なくとも私は、毎年受験生のために航空燃料や食費、移動費が公費で支払われてるということを、身をもって知っているわけです。
昨今はすぐ戦争に結びつけがちな自衛隊という存在ではありますが、先の大震災の例を挙げるまでもなく、災害救助でも活躍してくれる自衛隊、無下にはせずヒステリックに嫌悪したりもせず、どういった組織なのか体感したら良いのではないでしょうかね。
最後になりますが、私この航空学生受験は3次選考で落ちてます。操縦がまずかったのかもしれないですけど、恐らくは面接時の態度とか性格とかでしょうね。まあ詳しいことは伏せておきますけども。
親としてはもちろん、戦争や徴兵には目を光らせておきたい気持ちもわかりますし、どうしても神風特攻隊のような強烈なエピソードを思い浮かべますけども、私の経験ではそうそう簡単には自衛隊員にはなれませんよというお話でもありました。
投稿者 愛場大介(Daisuke AIBA / Jetdaisuke) : 2015年7月 4日 18:58